基礎ゼミを終えて。

先日、9月2日に国立音楽大学講堂大ホールにて、2020年度の基礎ゼミ「平部先生のお話」があり、私たちTravelersは昨年度の芸術祭でも公演した〈鏡の森〉をリメイクし発表した。

 

もともとは年度初めに行われる基礎ゼミであるが、今年は新型コロナウイルスの影響で延期となり後期の頭である9月に行われる運びとなった。

 

基礎ゼミに出演するにあたり、たくさんの方々にお世話になった。

野中先生、平部先生、教授の先生方、教務課の方々、メディアセンターの方々、コンピューター音楽専修の方々、、数えきれないほどの方が私たちのために動いてくださった。皆様の助けがなければ実現し得なかったでしょう。本当にありがとうございます。

 

さて、基礎ゼミ公演後いつものように気持ちを文字にしようと思ったのだが、公演が終わってからというもの、ずっと色んな思いがぐるぐると頭のを回っている。

後悔。反省。感謝。尊敬。

どう言葉にすればいいのかわからない。

下書きだけが増えるばかりだった。

 

だからこの記事では、一緒にひと夏を過ごし、苦楽を共にした仲間たちへ文字を綴ろうと思う。

 

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はじめに伝えたいこと。それはずっと後悔していることがあるということ。

7月の中旬ごろから活動を再開し、脚本を書き直していく作業があった。僕はその時コロナ情勢下で精神をかなりすり減らし、心が荒んでいた。でも、それを理由にみんながコツコツ頑張っている中、一人あまり努力しなかった。

もし、あの時自分が頑張っていたら。はじめから情熱を注げていたら。

終演後もやもやなしに100%納得いく結果になっていたのではないか。

そうでなくても、皆に心配をかけ頼り切ってしまったことに、深く深く反省している。

 

そして、任せろと言って雑務を始め、大変な作業をみんなが請け負ってくれて、とても嬉しかったもの事実だ。今までリーダー的立ち位置をすることが多かったが、手を差し伸べてくれたのは初めてだったかもしれない。ありがとう。

 

長い期間練習していく中で、自分の力量の無さに絶望し、悩んでいた時期があった。

何が良くて、何が悪いのか分からなくなり、まるで狭い部屋に押し込められたようで、窮屈だった。

Travelersは各分野で頑張っているひとばかりが集まっている。声楽、ミュージカル、作曲、3DCG、、、

そんな中、自分は何をこのチームに捧げられるのだろうか。それだけの技術と感性が僕の中にあるのか、とても考えさせられた。主観的であるから本当はどうなのか知らないが、僕から見てメンバーのみんなはそれぞれ魅力的で、本当に僕なんかと一緒にいて時間を使ってしまって良いのだろうかと、思い悩んだ。

 

   

いつかまた、信頼できる仲間と思い切り音楽したい。

これは僕の小学校を卒業する頃の夢であり、目標であり、そしてこれこそが音楽をしてきた理由だった。中学高校と追い求めてきたが、色んな波に揉まれる間にすっかりその感覚を忘れてしまったようだった。

この夏、特にキャストの4人(Travelers2人の他にお手伝いで2人来てもらっていた)はの頑張りを見ていて、血が騒ぐような気がして思い出した。

 

演出家のいない中、自分たちで振り付けを考え、練習し、反省する。そのサイクルの中で、振り付けがよくなければ厳しく自己批判し、今までの苦労を捨てて次の振りを考えるー

なんてストイックなんだ。

創作をする人ならばわかると思うが、普通、自分が絞り出して考えたことを捨てて、他のアイデアを探すということは本当にエネルギーを消費する大変なことだ。それでも、良くしよう、良くしようと作品のために時間と労力を費やす。

「好きなことだから、大丈夫!」

そんな言葉を言ったマヤの背中がどれだけ格好良かったか、言葉で表すことはできない。

 

これぞ「音楽家」。

本気でぶつかり、意見が割れることも1度や2度ではなかったが、それだけ情熱を注げる彼女たちには感激し、大いに尊敬した。自分も努力しなきゃと元気づけられた。

 

素晴らしい仲間に出会えたことに感謝したい。

あぁ、生きていてよかったなぁ。と、

この人たちとおんがくが出来て良かったなぁ。

と、そう思った。

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決して僕だけでは実現しえなかった、この劇。

無茶ぶりに無茶ぶりを重ねたのに、直前までアイデアを練ってくれた颯。

頑張ったものを否定されることがどれだけしんどいか、僕も分かっているつもりなので、貴方の努力が途方もないものだったと、よく分かる。

それでも匙を投げずに一緒に創作に加わってくれたこと、心の底から感謝したい。ありがとう。

感謝の気持ちは伝えようとすればするほど、言葉が空回りする。

 

 

ああ、終わってしまった。

練習している時間。反省のビデオを見ながらあーだこーだ言っている時間。みんなでお昼ご飯を食べた時間。電話会議で思いっきりぶつかった時間。練習室で1人、キャストの2人がどう踊るのか想いを馳せながら曲を書いた時間。

その全てが幸せに感じた。

こんなに幸せで良いのだろうかと、自分のような価値の薄い人間が幸せになってしまってもいいのだろうか。 

でもそれと同時に、もし10年、20年先に仕事としてこういうことができたらいいなと思う。

そして我儘を言っていいなら、在学中にもう一度こういう最高の時間を過ごしたいと思った。

 

何というか、初めて自分の中でこれが自分の幸せで、これが私の夢なんだ。というものを掴めた気がする。

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それぞれ目指すものがあり、向いている方向も歩き方も全く違う人間たちが、偶然、何億分の1という確率で、歩んでいる道の交差点で出会った。その奇跡を掴み取りこうして形にできたこと、音楽を通して時間を共有できたこと、心の底から嬉しく思う。そして、こんな風に想いを実現できる環境を作ってくださった方々に改めてお礼を言いたい。

 

 

 LINEのTravelersのグループに、未だにアナウンスされている最後の一週間の予定を見て思う。

この気持ちが永遠だったらいいのに。

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動画:引地颯