音楽劇の作り方③ ~シナリオ作り~

ブログ3日目。2日目になって1日目よりも多くの方に読んでいただき、反響もあり、自分のためと思って始めたとはいえ、とても嬉しく思う。読んでくださっている方々、本当にありがとうございます。

 

さて今日はシナリオ作りを追っていくのだが、シナリオ作りから作業は難航し、資料も膨大になる。そのため実際に起こったことを全て書き起こせていないことがあるかもしれない。

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↑仕込み中の国立音楽大学6-110スタジオ。なお今回の記事とは全く関係がない。

 

作業工程③ シナリオ(あらすじ)作り

2018年12月中旬辺りから、シナリオ作りが始まった。数えきれない程の没案が生み出され、今となってはそのメモすら何を意味しているのかさえ分からないものも数多く存在する。

 

その没案の幾つかを紹介しよう。

メモやノートを始め、LINEのトーク履歴からも拾っているので、文体に差があるがご了承いただきたい。 

 

案①

人間がAIを作り出した。
その機械は人のように心を持ち、まるで本当の人間かのように、家族のように一緒に過ごしていた。
しかし、次第にAiは成長し人間の知能を超え始めた。人を襲うようになった。
人間は、家族のように過ごした機械を壊すのか、それとも。

(う~ん。ありがち。面白いけど自分たちに共感できないね...)

 

案②

子供の頃は純粋無垢で、どんなに小さな事でも幸せを感じていたけど、色んな感情を知り、色んな事を経験して大人になるにつれ、昔のように純粋に小さなこと一つ一つに幸せを感じることが難しくなった。子供の頃の純粋な記憶を忘れてしまった。

夢の中の森に放り出され探検するうちに、大人になり色んな感情を知って、昔には感じられなかった幸せを感じられるようになったことに気づく。少しづつ1番大切な「何か」を思い出していくのだった。

現実世界に戻った主人公は、自らの起源を思い出し、目標に向かって歩き出すー。

 

案③

幼なじみがいて小さいころは凄く仲良くて、一緒に色んな本を読んでいたりしたけれど、最近なんとなく距離感を感じてて、モヤモヤしている…みたいな。

 

案④

主人公には上手くいかないことがある。ある日、ふと小さい頃に読んだ本を思い出す。しかし、続きのストーリーを思い出せない(希望が見えないこと、将来への不安の暗喩)。。

そんな主人公はある晩に夢を見る。夢の中でその本の主人公になってストーリーを進めていくが、途中までしか分からない。そうして途中から自ら物語を作りながら夢の中で生きていると、遂には幸せを掴むことができた。めでたしめでたし。

そこで夢から醒める。「私にも幸せになれる力を持っている!」と希望を感じる。

(本の中の役と夢の中の役を同一人物にする。性格やキャラは同じで、特徴をそろえる。)

 

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↑案④のメモ。文章では書かなかったが、目が覚めた後のシーンは意見が分かれ、分岐させていた。

 

案⑤

主人公は17歳の女の子。言いたいことが素直に伝えられず、でも本当は伝えたい。少し内向的な子。

Aさんとの距離感になんとなく「もどかしさ」を感じている。(昔のように素直に接することができない)

昔読んだ本の内容を思い出すが、途中から思い出せない。悩んでいるうちに寝てしまうのであった。

まるでファンタジーのような彼女の夢の中で、Aさんと彼女が協力しあい助け合い、距離感が縮まる。そして「歩み寄っていいんだ。素直になっても大丈夫なんだ」と気づくのだ。

その後、夢が覚めて...

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↑案⑤のメモ。この案はAさんが母親説と友達説があった。 ところでノートの上の大括弧の落書きはなんだ...

この他にもいくつかアイデアが出たが、メンバーの反応が微妙だったものは省いた。

 

イデアを出すということ。

ここまで全て没になったアイデアだったが、案②あたりからどれも共通する点が生まれてきたのである。

 

・「子供時代」を思い出す。

 大きくなって子供のころのようにできないことがあり、違和感を感じる。

・「夢」を見る。夢の中で何かが起こる。

・将来が不安。

 

これらの共通点は、「鏡の森」の原型になったシナリオにも引き継がれた。

また、原型に最初は含まれていなかったことも、作っていくうちにおのずと組み込まれていったのである。

 

ここで伝えたい事は、幾つものアイデアを出しているうちに、自分たちが本当に言いたいことが自然と現れてきたということである。もしかしたら、当時感じていた自分たちの悩みが幾つものアイデアを考えるうちに、言葉として表層にしみ出してきたのかもしれない。

兎にも角にも、こうして数えきれない程考え出されたアイデア一つ一つが、私たちにとっての道しるべとなったのだ。

 

インプットと細切れのアイデア

このシナリオ作りの期間中、脚本制作チームのマヤと私は芝居についてそれぞれ勉強をした。

劇に限らず、本を含む数多くの作品から刺激を受け、また物語の構造についても分析をし学んだ。

 

起承転結と3幕構成

これは私が天下のウィキペディア先生を熟読し、少しでも構成の手助けになればと勉強したものだ。

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特に役立ったのは、A,B,C,Dとかそういう構成ではなく、物語の最初のメインキャラクターの説明、物語が動き出すきっかけやセントラルクエスチョン(主人公の達成目標)、それによって引き起こされるターニングポイント、エピソード、など、物語を創作するうえでの重要な要素の存在を知ったことだ。

確かに、言われてみれば当たり前の要素なのだが、こうして体系的に説明されると以降他の作品や自分たちのアイデアを分析するのに役立つ。

(余裕があれば、構成についての記事も出すかもしれない。)

 

アナリーゼ

物語においての構成について勉強したところで、実際の舞台作品の分析も行った。

30分の構成で「音楽と役者が対等である劇」という条件で私が一番に思い浮かべたのは、東京ディズニーシー「ハンガーステージ」にて当時上演されていた「Out of Shadow Land」という舞台だ。

どの言動が、それぞれ何の要素にあたるのかを考えながら、それぞれ関連するセリフや行動に矢印を引いて情報を体系化していくと、大変精密な構成がはっきりと見えるようになったのだ。

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↑「Out of Shadow Land」のアナリーゼ。文学を読み解くのってこうすれば良かったのかと今更ながら思った。

 

舞台作品以外からの刺激

私が構成について勉強する中、マヤは舞台作品以外の芝居からアイデアを持ってきた。

例えば人形劇だ。

 

・人形劇から始め、途中からは人形だった役を人が演じる。

・その変化は時間の変化によるもの。(過去の話は人形劇、現在の話は舞台)

・影絵を使う。

 

時間によって見え方が変わる演出というのは形こそ変えたものの、その後「鏡の森」にも組み込まれた。

このように、様々な形態の作品からアイデアや要素を学び、時には歌の歌詞からイメージを膨らませ取り入れた。

 

また、音楽と役者を対等にするためのアイデアも考案された。

 

・感情によって音楽が変わる。

・その音楽は背景ではなく、主人公の心の中から聴こえてくる音楽。

・はじめは鼻歌のように音楽がはじまる。

・心が動いたとき歌が生まれる。

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↑当時の話し合いメモ。マヤが絵を使って説明してくれた時のものが残っていた。

 

イデアは突然降ってくる。

そう。それは、メンバーで練習室に集まり話し合っていた時に起こった。(メモによると1月15日)

 

Sさん(仮) 「いやぁー、アイデアまとまんねぇなぁ」(と言いスマホを見る。)
Nさん(仮) 「んだねぇ、、、あーこうやって無駄な時間が過ぎていくんだよなぁ。またスマホ触っちゃったよ。」(スマホを片手に)
Jさん(仮) 「わかる。分かっちゃいるのにすぐスマホ見ちゃうよね」(Twitter見ながら)
Nさん 「ん?待って?!これじゃない?スマホみて時間を無駄にするってまさにこれこそぴったりのテーマじゃない?」
一同 「!!!!!!」

 

 

そこからは早かった。今までのアイデア出しの積み上げもあり、シナリオが書けたのはあっという間だった。すぐに雑談をしてしまったり、スマホを見てしまう最も私たちらしい反省点だったが、それが転じてこう形になるとは今思い返しても面白い。

勿論これは完成版とはかけ離れているし、あくまでもスケッチではあったが、ここから「鏡の森」は始まった。

f:id:takumin11811:20200317124241j:plain↑思いつくままに書き上げたスケッチ。角度がもはや45°  

 

シナリオの完成

スケッチが完成してから、幾度となく刷り直しが行われた。細かいエピソードなど盛り込んだり、設定なども少しづつ細やかにしていった。

 大体1か月半ほどこの作業をして、やっと原型ができたのである。

 

f:id:takumin11811:20200317132732j:plain↑マヤが書いたシナリオのメモ。歌やセリフの入るタイミングがざっくりとだが書き込まれている。f:id:takumin11811:20200317132156j:plain↑マヤのメモを元にさらに細かく書き込んだ私のメモ。2つのメモを元にこの先の作業が進められていく。

 

 大きな流れと大体の設定が決まり、ここから次のステップの「音楽計画」と「音楽制作」が始まる。

 正直に言うと、この段階ではこの物語がどんなものであるのか、どのような劇になるのか誰一人想像できていなかった。可能性の振り幅がまだまだ大きく、不確定要素が多い段階だ。完成と言えるほどになったのは劇の発表の間近10月頃だっただろう。 

 

次回詳しく説明をするが、この不明瞭な段階で「この場面では恐らくこんな歌が歌われるであろう」という想定でM05「花」という主人公が初めて歌う曲を、私が書いた。

この曲は歌詞こそ変更があったものの、メロディーはそのまま、またモチーフとしても幾つもの部分が使われる、この劇において中心軸となる曲になった。

 

youtu.be

 ↑完成版M05「花」

youtu.be↑M05の初期構想。書いたのは2019年3月25日で、この鏡の森の原型となった曲ともいえる。練習中だからちょっと下手くそ笑 

 

といったところで今回はここまで。

次回はいよいよ音楽制作に入っていく。それでは。  

 

P.S.

Sさん(仮)・・・のところのhtmlが上手く書けず少し見づらくなってしまった。

解決法わかる方は教えてください...